まだ1錠も飲んでいないのに、「やめどき」から調べています。
正直に言うと、私はAGA治療をこれから始める側です。40歳、生え際が気になり出して、無料カウンセリングを予約しようか迷っている段階。それなのに最初に検索窓に打ち込んだのが「AGA治療 やめる」でした。
変な話に聞こえますか。でも私は、始める前に出口を知らないのがいちばん怖いんです。効かなかったらいつまで払い続けるのか。副作用が出たらどうするのか。やめたら元に戻るのか。ここが分からないまま毎月お金を出すのって、行き先を告げずにタクシーに乗るようなものだなと。
なので調べました。今回はクリニックのコラムではなく、日本皮膚科学会が出しているガイドラインと、クリニックが自社サイトに載せている料金表を直接見にいっています。数字はそこから引いています。
先に結論だけ言うと──「効果なし」と判断していいタイミングは、多くの人が思っているよりずっと後です。
まず「何ヶ月経ったか」を数えてください
日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」には、フィナステリド内服についてこう書かれています。
少なくとも6カ月程度は内服を継続し効果を確認すべきである
つまり、3ヶ月で「効かない」と結論を出すのは早すぎる。ここ、メモしといてください。
しかも効果の出方は、時間とともに積み上がっていくタイプです。同じガイドラインが引いている日本人男性414名の試験では、こうなっています。
- 48週(約11ヶ月)時点:1mg/日で58%が「軽度改善以上」
- 2年間の継続:68%
- 3年間の継続:78%
さらに別の日本人男性801名の観察研究では、5年続けた人の99.4%で写真評価上の効果が確認された、とあります。40歳未満の人、重症度の低い人ほど効果が高かったとも書かれていて、そこは40歳の私には少しだけ焦る材料でした。(出典:日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」/2026年8月22日確認)
数字を並べると身も蓋もないんですが、要するに短期でジャッジする設計になっていない治療なんですよね。
ただ、期間さえ待てばいいかというと、そうでもなくて。判断する「モノサシ」がズレていると、6ヶ月経っても結論は出ません。
鏡と記憶で判断すると、たぶん間違えます
毎日見ている自分の頭って、変化がいちばん分かりにくいんです。しかも人間の記憶は「良かった頃」を都合よく美化します。
じゃあ専門家なら一発で分かるのかというと、そこも実は繊細で。ガイドラインが紹介している国際試験では、デュタステリドとフィナステリドの効果差を7段階のスコアで比べたところ、専門家パネルの評価差は頭頂部で0.14、前頭部で0.24しかありませんでした。プロが目を凝らして、やっと0.1〜0.2の差です。
だとしたら、素人の「なんとなく変わってない気がする」は判断材料としてかなり弱い。それで私が、始める前から決めているのがこれです。
- 開始日に、同じ場所・同じ照明・同じ角度で頭頂部と生え際を撮る
- 以後は月1回、同じ条件で撮る(スマホの日付がそのまま証拠になります)
- 比べる相手は「先月」ではなく「開始日」
先月と比べても差は出ません。半年前と比べるから見えるんです。
期間とモノサシが揃ったら、次は「6ヶ月を待たずにやめていい理由」の話です。
副作用は、我慢して続ける話ではない
ここは盛らずに正直に言いますね。フィナステリドやデュタステリド(5αリダクターゼ阻害薬。男性ホルモンを薄毛に関わる形へ変える酵素をブロックする薬です)には、性機能に関する副作用の報告があります。
フィナステリドについてガイドラインは、12件のランダム化比較試験(男性3,927名)をまとめたシステマティック・レビューを引き、性機能障害の相対危険度を1.39(95%信頼区間0.99〜1.95)と紹介しています。「上昇する傾向がある」という書き方で、はっきり差があるとまでは言い切っていません。加えて、頻度は明らかではないものの、まれに肝機能障害が現れることがあるとされています。
デュタステリドのほうは、報告に大きな幅があります。
- 国際臨床試験:リビドー減少3.3%/インポテンツ5.4%/射精障害3.3%
- 韓国の市販後調査(712例):1.3%/1%/0.1%
- 国内の非ランダム化試験(120例・52週):8.3%/11.7%/5.0%
同じ薬なのに1%台から11%台まで開いている。だから「◯%だから安心」という読み方はできません。自分に出たかどうかが全て、という理解のほうが正確です。
そしていちばん大事なのは、副作用が出たときに黙って自己判断でやめないこと。量を変える、薬を替える、いったん止めて様子を見る──どれも医師と決める話です。効果にも副作用の出方にも個人差がありますから、気になる変化があれば早めに相談してください。
もうひとつ、40代なら知っておいて損しない話があります。
健康診断でPSAを測る人は、必ず申告を
ガイドラインには、フィナステリド1mg/日を使った男性355名の試験で、前立腺がんのマーカーである血清PSA濃度が約50%低下したと書かれています。そのため治療中にPSAを測る場合は、2倍した値を目安に評価すべきとされています。デュタステリドも同様です。
これ、地味にデカいんです。黙っていると「PSAが低いから問題なし」と読まれてしまう可能性がある。健康診断や泌尿器科では、AGAの薬を飲んでいることを必ず伝えてください。
やめる・続ける・変えるの早見表
判断を「やめる」「続ける」の二択にすると苦しくなります。あいだに「変える」を置くと、途端に楽になる。整理するとこうです。
もう少し続けていい
- 開始から6ヶ月未満で、つらい副作用が出ていない
- 同条件の写真を撮っていない(=そもそも判断材料がまだない)
- 抜け毛が一時的に増えたが、外用薬を始めた直後である
医師に相談して「変える」
- 6ヶ月以上続けて、同条件の写真でも変化が読み取れない
- 性機能や体調に、気になる変化がある
- 効果には納得しているが、月額が生活を圧迫している
いったんやめる(これも医師と決める)
- 肝機能の数値や体調に、明らかな異常が出ている
- 医師と話したうえで、続ける理由を自分の言葉で説明できない
見てのとおり、「効かないからやめる」と「高いからやめる」はまったく別の問題です。ここを混ぜると、本当は体に合っていた薬まで一緒に手放すことになる。
で、その「高いから」のほう。実際いくらなのか、公開されている数字を見てみます。
結局いくら? 月3,700円台から9万円台までの落差
AGA治療は自由診療なので、値段はクリニックが自由に決められます。公式サイトに料金を出している2院を並べます。
イースト駅前クリニック(公式料金ページ/2026年8月22日確認)
- フィナステリド1mg 28錠:3,740円
- デュタステリド0.5mg 30錠:6,930円
- ミノキシジル外用薬:5,500円
- 診察代0円(ただし診察後に薬を購入しない場合、3,300円がかかる場合あり)
AGAスキンクリニック(公式料金ページ/2026年8月22日確認)
- ジェネリックのフィナステリド錠1mg:初回3,700円/2回目以降6,600円
- ザガーロ30錠:初回5,300円/2回目以降10,450円
- 「はじめて発毛プラン」:16,800円/月(12ヶ月コース)
- 「本気の発毛プラン」:95,600円/月(12ヶ月コース)
同じ「AGA治療」という4文字の中に、月3,700円台と月9万円台が同居しています。ランチ2回分と、ひとり暮らしの家賃くらいの差です。
ここで効いてくるのが、さっきの「最低6ヶ月」という前提。月6,600円なら半年で約4万円、月16,800円なら約10万円、月95,600円なら約57万円。効果が出たかどうかを判断できる地点に着く前に、その金額を払い切れるか。これが現実的な論点になります。
だから私は、始める前に「半年でいくらまでなら出せるか」を先に書き出しておくつもりです。走り出してからだと、やめる理由が財布の話から効果の話にすり替わってしまう気がして。
そしてもうひとつ、いちばん聞きたかった質問が残っています。
やめたら、元に戻るんですか
ガイドラインの記述はそっけないくらいシンプルです。
なお,内服を中止すると効果は消失する.
増えた分がそのまま残る、という話ではないということです。つまりAGA治療は「治して終わり」ではなく、続けているあいだその状態を保つタイプの治療に近い。ここを知らずに始めると、やめたときのショックが大きくなります。
ついでに言うと、デュタステリドについては同じガイドラインに「1年を超える長期投与での効果や投与中止後の毛髪量変化については検討されていない」とも書かれています。やめた後どうなるかは、薬によってはまだ十分に分かっていない。ここは正直にそう受け取っておくべきところだと思います。
材料は揃いました。最後に、やめる前に置ける選択肢を挙げておきます。
「やめる」の手前に置ける、3つの手
- 薬を替える:フィナステリドとデュタステリドは効き方が違います(デュタステリドは酵素のI型・II型の両方をブロックします)。ガイドラインはフィナステリド内服・デュタステリド内服・ミノキシジル外用をいずれも推奨度Aとしています。選択肢は1本道ではありません。
- お金の出し方を替える:同じ成分でも院によって価格が違います。上の2院を比べただけでも、フィナステリド1mgで倍近い開きがありました。オンライン診療まで含めれば選択肢はもっと広がります。
- 続ける理由を言葉にする:「見た目を良くしたい」のか「これ以上減らしたくない」のか。ゴールが違えば、納得できる金額も期間も変わります。
逆に絶対にやってはいけないのが、自分の判断で量を減らす・飲んだり飲まなかったりすることです。効果判定が成立しなくなって、6ヶ月待った意味が消えます。
判断を濁らせる「頭皮のコンディション」は先に潰しておく
意外と見落としがちなんですが、頭皮が荒れていたり日焼けしていたりすると、「薬の効果」なのか「頭皮の状態」なのかが混ざって、判断が濁ります。しかも髪が薄くなるほど、頭皮には直接日差しが当たる。調べていて、ここは完全に盲点でした。
それでカウンセリング前に買い足しておこうと思っているのが、髪と頭皮にそのまま使えるスプレータイプの日焼け止めです。ナプラ ミーファ フレグランスUVスプレー クリア 無香料 80gは、SPF50+・PA++++で、缶に「HAIR & SKIN」と書かれているとおり髪にも使える設計。無香料タイプなので、整髪料や柔軟剤のにおいとケンカしにくいのも選んだ理由です。
向いているのは、外回りが多い人、通勤で毎日そこそこ日差しを浴びる人、そして分け目が気になり始めた人。注意点は、スプレーなので少し下を向いて頭皮まで届かせないと意味が薄いことと、汗をかいたら塗り直しが要ること。そして当然ですが、これは日焼け対策の品であって、薄毛を治すものではありません。そこは分けて考えてください。
私ならこう決める
長くなったので、まだ始めていない私が「始める前に決めたこと」だけ置いておきます。
- 開始日に写真を撮る。以後は月1回、同じ条件で。
- 効果の判断は6ヶ月経ってから。それまでは鏡を見て一喜一憂しない。
- 半年で払える上限額を、始める前に紙に書いておく。
- 体調や性機能に変化が出たら、我慢せずその場で医師に連絡する。
- やめるときも、自己判断ではなく医師と一緒に決める。
「やめる・続ける」は、追い詰められてから考えると、たいてい感情で決まります。財布が苦しい月とか、飲み会で頭を見られた気がした翌日とか。まだ1錠も飲んでいない今のうちに決めておくのが、結局いちばん安く済む方法なんじゃないかと思っています。
最後にひとつだけ。ここに挙げた数字は、公表されている試験結果と各院が公開している料金です。効果の出方には個人差があり、あなたの結果を約束するものではありません。迷いや気になる症状が出たときは、必ず医師に相談してください。